アジアにおける石炭火力発電所への投資リスクの分析

新興市場の石炭火力投資において株主が考慮すべき財政リスクと懸念
2019年10月11日

要約

  • ここ数か月の間に複数の主要金融リスクデータプロバイダー(ムーディーズ、S&P、フィッチ等)がアジア圏内新興市場における石炭火力発電プロジェクトに関与する事業に対するリスク分析結果を公表した。いずれも、各地域で急速に成長している再生可能エネルギーとの競争と環境規制の強化により石炭火力が座礁資産となる危険性を指摘している。大手ESGデータプロバイダー、RepRiskにおいては石炭火力発電プロジェクトに関わる事業リスクとして企業評価の低迷を示唆した。 

  • 三大メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャル・グループ(SMFG)は、新興市場における石炭火力発電プロジェクトファイナンスに推定50億米ドルの融資を行っている。その大半はインド、インドネシア、ベトナムを拠点としたプロジェクトだ。この融資は国際協力銀行(JBIC)を介した日本政府からの融資で支えられ、政府機関である日本輸出投資保険(NEXI)によって保証を受けている。これにより財政リスクに晒されている銀行の投融資は、企業向けローンへのエクスポージャーを通じてさらに高額となる可能性があると報告書は見ている。

  • 三菱商事、丸紅、三井物産を含む日本の商社は、新興国市場内において全18件の石炭火力発電プロジェクトに出資しており、また少なくともそのうちの10件は全体コストの3割以上に及ぶ大規模な出資をしている。これら日本の商社による石炭火力発電プロジェクト出資詳細の開示はされていないため、正確な財政リスクを把握することは困難である。すなわち真のエクスポージャーはこの報告書が表すよりも広範囲及び高額に及んでいる可能性は否定できない。また急速に成長する代替エネルギー源との競争と環境規制の強化により、アジア圏内のエネルギーミックスにおける石炭火力発電の存在は不確実さを増している。また、発電価格競争に石炭発電が負ける可能性は十分にあると考えられている。よって石炭火力発電プロジェクトへの出資には高いリスクが伴うと本報告書は忠告している。

  • 民間銀行の融資は日本政府によって保障されてるものの、石炭火力発電プロジェクト融資に関与するにあたり金融機関評価そのものを低下させる重大なリスク、すなわちレピュテーションリスクが存在する。外資の金融機関に比べ、日本三大メガバンク(MUFG、みずほグループ、SMFG)は石炭火力融資に関する政策面ではるかに遅れをとっていると考えられる。これは現代社会で石炭火力に関わる融資がメディア、株主、NGOのキャンペーンなどによって非難をされているが、日本の金融機関が石炭火力関与によるレピュテーションリスクに対し十分な対策をとっていないからである。

  • 石炭火力発電、及び関連するバリューチェーン(鉱業、インフラ、電力工学等)が世界的潮流として金融界、政策界、メディア界から非難の的になっている現状に加え、再生可能エネルギーコスト競争力の向上によりエネルギーミックス内における石炭火力発電の規模、継続性、そして経済性が低迷している。一般炭プロジェクトに関与するにあたり貸し手、投資家、企業のビジネスリスクは今後増大する一方だと本報告書は忠告している。

  • 世界的に知名度のある金融機関はここ近年、脱炭素化を求めるキャンペーン運動の的になっている。これを踏まえ、多くの金融機関が石炭火力融資に対し厳しい姿勢をとり始めている。報告書内の調査によると貸し手(プロジェクト・レンダー)としてグローバルトップ10内にも入る日本の銀行(MUFG、みずほグループ、SMFG)は、欧州の同業他社との石炭火力融資政策の比較に対し、このような社会的動きを取り入れた政策の打ち出しに大きな遅れをとっているという結果が出ている。

  • Bloomberg New Energy Finance (BNEF)データに基づき、シンクタンクのカーボン・トラッカー・イニシアチブが分析した結果、再生可能エネルギーのコスト急落により石炭火力資産の経済性および実行可能性は低迷し、「座礁資産」となることが示唆された。本報告書で取り上げた国インド、インドネシア、ベトナムの場合、その潜在的価値はGDPの約3%である。 この分析で炭素価格は考慮されていない。

  • 気候変動の物理的影響の悪化が懸念され、国民および政治的関心が高まるにつれ、融資の受益国では政府が日本の政府支援融資の条件を変更する可能性があり、将来電力市場が混迷することが予測される。 前例はないものの、このような事態は、ビジネスと金融業界に気候変動リスクに対する予測不可能な戦略を要している現在の傾向に沿ったものになるであろう。さらに、気候変動に関連する損失に対し日本政府がローンの保証を行うかはまだ分かっていない。

  • 日本の「三大メガバンク」と主要商社の債券と株の両方を含む投資運用は、既存および計画債務(プロジェクト債を含む)と国外の石炭火力発電への株式エクスポージャーについてより高い情報の透明性を伴うべきである。そして石炭火力発電プロジェクトへの関与に伴うレビュテーション・リスクを評価する方法、および気候変動リスクがどのように考慮され、融資決定に反映されるかについても考慮すべきである。 この情報開示は、現在、経済産業省(METI)が推進している気候関連金融開示に関するタスクフォース(TCFD)の権限内にある。

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