2020年に向けての日本のエネルギー選択

InfluenceMapレポート
November 2017

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本レポートは日本の国内と東南アジアにおいての石炭火力の拡大と、加速する再生可能エネルギー容量の比較、そして誰がこのような計画の原動力になっているのかを調査した。この戦略は日本の技術産業の戦略的利益に一致していないことが分かった。

  • ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は「太陽光と風力の急速なコスト低下と、電力需給のバランスをとるのにますます重要な役割を担う電気自動車のバッテリーを含む蓄電池により、2040年までに世界が新たな発電技術に投資額全体10.2兆USドルの4分の3相当が再生可能エネルギー源になる」ことを予想している。国際エネルギー機関(IEA)とBNEFはともに、石炭火力発電の世界的な段階的廃止を予測している。

  • 世界の石炭からの段階的廃止という潮流にもかかわらず、国内の石炭火力発電容量(46基、21GW が計画中)を増加させていてる日本は、G7諸国の中でも異色である。これに平行して、海外発電プロジェクトへの公的資金援助は石炭火力発電に主に向けられている。主に東南アジア諸国では30GW にも上る石炭火力プロジェクトが計画段階にある。

  • 日本は太陽光技術では当初の先導的立場を失ったものの、発展し続ける再生可能エネルギー市場で成功するのに必要なリチウムイオン電池や部品、原料等の研究開発能力と製造能力を持っていると本研究は結論付けている。この成功は石炭火力発電計画から太陽光や風力へ方向転換することによって左右される。

  • 日経トップ100社の53%(市場価値の合計は約140兆円、350万人を雇用)は石炭に比べ再生可能エネルギー発電の拡大が望ましい事業モデルを日本と海外の両方で展開している。これに比べ6%の企業が石炭火力関連市場を好んでいる。

  • 日本のエネルギー政策は、産業界を代表する経団連、そして経済産業省、内閣総理大臣安倍晋三率いる官邸周辺の三つの組織に委ねられていることが多い。これら三つの組織は、自由化した電力市場においての太陽光と風力の急速な拡大よりも、既存の大手電力会社による大規模石炭火力発電の開発を支持する立場をとっている。

  • 誰が経団連-経済産業省-官邸周辺の力の三角関係の中で代表されているかという分析は、電力産業、エネルギー集約型産業、化石燃料関連の産業の影響力の優位性を明らかにした。技術分野や自動車、通信、建設業界が産業界を代表することは少ない。労働者組合やNGO、地方自治体、メディア、市民団体、その他省庁、海外の関心といった他の利害関係者のエネルギー政策立案過程においての影響力は取るに足らない。

English language version of Japan's Energy Choices to 2020 available here.

引用

当レポートの分析が示すように、世界の発電市場の太陽光や風力への抜本的また急速なシフトは、技術、製造、関連サービスに強みを持つ日本の産業に大きな好機をもたらすと考えます。日本にはエネルギー自給率が6%と主要国の中でも極端に低くいことや、オイルショック以来のエネルギーセキュリティ政策、原子力発電所再稼働の困難さ、再生可能エネルギー導入での日本特有の問題などさまざまな課題がありますが、主要新興市場での海外エネルギープロジェクト支援をはじめとする日本のエネルギー政策で、石炭火力よりも再生可能エネルギーに、より焦点が当てられることが望まれると考えます。それによって、日本の経済、産業、企業が、グローバルなビジネスチャンスを最大限に生かすことにつながると見込まれるからです。

荒井 勝
NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム, 会長

日本の海外での石炭発電所建設の動きは世界的で長期的なトレンドを示すものではない。日本の企業はそこに商業上の利益がある時に随時、幾つかの途上国で石炭火力発電所を建設している。しかも、それらの途上国はパリ協定に参加している。海外での石炭火力発電所の建設の動きはこの短期的な脈絡の下で理解されるべきだ。 石炭は国内でも課題を抱えている。地域では歓迎されないエネルギーとなった。抗議活動や訴訟は多発している。石炭火力を推進する勢力は今後の困難を予見している。

この状況下で炭素価格は重要だ。石炭由来のCO2排出の真のコストが明らかになれば急速に価格が低下している再エネ技術と競争できないことが明らかになる。炭素価格を設定し、石炭火力の縮小に伴う苦痛を緩和する政策措置が取られれば、ゼロ・エミッションへの移行は可能になる。この移行は日本の産業に巨大な新しい機会を提供する。石炭火力発電時代に存在した雇用はよりクリーンな雇用に移行し、企業はより巨大な機会を手にすることになる。私はこのようなクリーンなエネルギーがどれ程の躍動する世界を作るのかを如実に日本の国民に告げた点で今回の報告書を高く評価する。

西村 六善
元地球環境問題担当特命全権大使

本数値的分析は、石炭と比較して国内と海外での再生可能エネルギーを拡大することにより、日本の産業界がさらに多くの利益を得ることができることを明確に示している。エネルギー資源に乏しいが、技術的そして製造におけるイノベーションに溢れている日本のことを考えると、これは直感的に明らかなことである。

タナー・ディラン
InfluenceMap エグゼクティブ・ディレクター(「2020年に向けての日本のエネルギー選択」執筆者)