アセットマネージャーと気候変動(2021年版)

2021年3月22日

ポートフォリオ、エンゲージメント、および議決権行使を通じた資産運用セクターの取り組み

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  • FinanceMapの「アセットマネージャーと気候変動」2021年報告書は、ポートフォリオ、スチュワードシップ(エンゲージメント:建設的な対話)、および株主提案・議決権行使(shareholder resolutions)に関する資産運用セクターのパフォーマンスに着目するものである。世界の大手アセットマネージャーが運用するポートフォリオは、依然として気候変動リスクの高い自動車、石油・天然ガス・石炭生産、および電力といった重要セクターにおいてパリ協定の目標から乖離している。世界の自動車メーカーによる電気自動車(EV)のリリース速度は十分でなく、またとりわけアジアにおいて、石炭の生産および石炭火力発電の段階的廃止が十分な速さで進んでいない。そうした状況にも関わらず、エンゲージメントや議決権行使を通じてこれらの企業の移行を加速させようという大手アセットマネージャーの取り組みはまちまちであり、必要な変化を推進するだけの力強さを欠いている。この点において、米国大手アセットマネージャーは依然としてより小規模な欧州勢に遅れを取っている。

  • 世界最大級のアセットマネジメント・グループ30社は、その保有株式数で見ると、パリ協定の目標から8%〜27%逸れている(数値の開きは、各社が運営する市場の地理的差異による)。これらのグループのポートフォリオは、自動車、石油・天然ガス生産、石炭生産、および電力において「ブラウン」テクノロジーを活用する企業の比重が大きく、「グリーン」テクノロジーを取り入れる企業の比重が小さくなっている。 時価総額合計 20兆ドル 超(2020年12月時点)の企業がこれらのセクターで活動しており、2020年11月にブラックロック(BlackRock)CIOによって強調された「座礁資産化」の気候変動リスクの中心に据えられている。 

  • 本報告書は、企業との最も強力なエンゲージメントのほとんどは相変わらず欧州大手のBNPパリバ・アセットマネジメント(BNP Paribas Asset Management)、リーガル&ジェネラル・インベストメントマネジメント(Legal & General Investment Management)、UBSアセットマネジメント(UBS Asset Management)によるものであることを示している。いずれも「A+」を獲得しており、スチュワードシップ・プロセスにおいて完全な透明性を確保しているうえ、ビジネスモデルの移行およびロビー活動に関して企業とエンゲージメントを行ったエビデンスが見られる。

  • 1兆米ドル近くの資産を運用する日本最大級の三井住友トラスト・アセットマネジメントもまた、気候変動に関するエンゲージメントでハイスコア(B+)を獲得している。これは、同社の強固な気候変動エンゲージメント・ フレームワーク、およびビジネスモデルの転換に関する企業との実りある個別・協働エンゲージメントのエビデンスを反映したものである。このスチュワードシップは、日本の電力セクターに対し、石炭火力発電から再生可能エネルギーへの移行を促すうえで重要となる。日本の電力セクターとパリ協定との乖離が、2,000社超の日本企業を含むTOPIX(東証株価指数)インデックスファンドの−29%の乖離の主因となっており、その度合いは主要株式市場の中でも最大となっている。それに対し、米国S&P500とMSCI World に関しては、それぞれ−11% 、−17%の乖離が見られた。 

  • 気候変動に関するエンゲージメントにおいて欧州勢が発揮するリーダーシップは、米国大手とは対照的である。2020年12月付データによると、米国4大アセットマネージャー、ブラックロック(BlackRock/7.3兆ドル)、バンガード(Vanguard/6.2兆ドル)、フィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments/3.3兆ドル)、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(State Street Global Advisors/3.0兆ドル)が世界の株式市場のおよそ20%を支配している(4社合計の運用資産残高(AUM)は 20兆ドル)。気候変動に関するエンゲージメントでは、現在ブラックロック(B)が最大大手4社を率いており、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(B-)がそのすぐ後に続いている。2社共に、2020年にCA100+エンゲージメントイニシアチブの参加機関となっている。フィデリティ・インベストメンツ(D)とバンガード(C)は同プロセスには未だ参加しておらず、また、パリ協定に整合させた企業の移行促進やロビー活動のガバナンスについての言及は最小限にとどめられ、気候変動に関するエンゲージメント・プロセスの透明性が欠如している。

  • 議決権行使は、企業に個々の業績(パフォーマンス)について問いただすための強力なツールであると同時に、気候変動に関するガバナンスの問題をより広範な市場に対して提示するものである 。本研究が示すところによると、2020年の株主総会シーズンにおける気候変動関連議案に対する賛成投票率は、 2018年、2019年に比べ全体的に増加した。こうした市場動向に反して、米国の資産運用大手ブラックロック、バンガード、キャピタル・グループ(Capital Group)、フィデリティ・インベストメンツは、未だに気候変動関連議案の75%以上に対して支持を拒否している。2018−19年から少しは向上しているものの、これらの米国大手は、最高スコアを獲得したアクサ、 BNPパリバ、リーガル&ジェネラル、アビバ、そしてアリアンツ(Allianz)の資産運用部門(いずれも議案の80%以上を支持)に遅れをとっている。ロビー活動やエネルギー転換計画、その他の重要な気候変動問題に関する議案に対する世界最大級のアセットマネージャーからの支持不足は、依然として気候非常事態に係る投資家による力強いスチュワードシップの障害となっている。

  • グローバルな投資家が自動車やエネルギー、化石燃料生産といった気候変動リスクの高いセクターへの投資を継続しながらも、パリ協定との整合性をポートフォリオに反映させることを望むなら、関連企業とのより強力なエンゲージメントを最優先すべきである。そのエンゲージメントは、個々の企業による低炭素テクノロジーへの移行を加速させ、気候変動政策関連のロビー活動をパリ協定と整合させるよう企業を促すという2つの目標に加え、気候変動リスクに係る情報開示にまつわる問題を重視する必要がある。

  • 最終的には、企業に対するスチュワードシップおよび株主提案・議決権行使は、望ましい結果を導き出せるかどうか、その力量をもって評価される必要がある。CA100+エンゲージメントイニシアチブについて言えば、パリ協定の目標に沿って企業を移行させることが目的である。こうしたエンゲージメントの成果は、対象企業における改善度合いを測定する現実的かつ実証された手法を用いて評価されることになると思われる。CA100+発足から4年目を迎え、2021年にはそうしたメトリクス(測定指標)がより手近に利用できるようになり、それに伴いアセットマネージャーにエンゲージメント・パフォーマンスに関する説明責任が生じるものと見られる。

報告書の英語版は2021年1月発行-メディア掲載 Sky News’ Ian King Live, Bloomberg Radio's Daybreak Europe, Bloomberg Green, L'AGEFI, Funds Europe, International Business Times, Asset News, Citywire Selector, Boursoramo, The Actuary, ITV News, edie, Energy Voice, Funds Europe, Yahoo News, France 24, RTL Today, Evening Express, Oxford Mail, Bangkok Post, Taipei Times.

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InfluenceMapの「アセットマネージャーと気候変動」2021年報告書を、気候変動に関する機関投資家の戦略と優れたガバナンスに役立つ重要な調査として歓迎します。本レポートが示すとおり、多くの機関投資家が気候変動対策をリードしている一方で、まだ多数の投資家の対応は遅れており、パリ協定の目標にポートフォリオを整合させるために早急な対応が必要です。 気候変動への対応を成功させるには、投資業界全体から野心的なコミットメントが必要であり、PRIではこの動きが加速するよう取り組んでいます。2020年12月にPRIは、投資とエンゲージメントの両方を通じた資産運用業界による取り組みを進めるためにネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアチブ(Net Zero Asset Managers Initiative)を共同設立しました。またPRIはアセット・オーナーと共にネット・ゼロ・アセット・オーナー・アライアンス(Net Zero Asset Owner Alliance)を通じて、資産運用会社とポートフォリオやパフォーマンスについて対話し、またClimate Action 100+を通じて企業とのエンゲージメントについて対話を進めています。さらに、2020年からはPRIレポーティングにおいて気候変動に関する指標の報告を求めており、結果の一部は今年初めて公開されます。

フィオナ・レイノルズ氏