自動車産業と気候変動

自動車メーカーの1.5℃戦略の評価

2022年5月

InfluenceMapの新しい双方向型の Automotive Climate Tool は、自動車産業による気候変動政策への関与についての分析結果と、自動車メーカーのZEV生産戦略に関する業界標準IHS Markitデータ(2022年4月に公表された同年3月時点のデータ)に基づいています。

調査結果は、InfluenceMap報告書「The Automotive Sector and Climate Change」(英文)または概要(和文)をご覧ください。

世界の大手自動車メーカーの気候変動戦略は、1.5℃目標に沿ったゼロエミッション車(ZEV)への移行を阻害している。  InfluenceMapによるIHS Markitデータの分析結果では、1.5℃目標と整合するIEAの2030年ZEV目標を達成するには、世界中の自動車セクター全体で2029年から2030年にかけてZEVの年間生産台数を80%増加させる必要があると明らかになった。本研究は、現在の予測では、メルセデス・ベンツ (2029年に56%)とテスラ (2029年に100% )だけがIEAの1.5℃に向けたZEV生産目標(2030年までに世界の新車販売台数の57.5%)を達成する軌道に乗っていることを明らかにしている。

同時に、自動車メーカーは依然として、ZEVへの移行を加速しようとする各国政府の政策の大きな障害となっている。 InfluenceMapが分析した12社のうち8社は、気候変動政策への関与・働きかけとパリ協定との整合性という観点で総合評価が「D 」または「D+」となっている。自動車産業による気候変動政策への働きかけの主な特徴として、表向きには気候変動対策を支持するメッセージを発信しながらも、内燃機関(ICE)車を段階的に廃止する規制に抵抗すべく、戦略的な働きかけを行っていることが挙げられる。

電気自動車(EV)への移行で遅れをとる自動車メーカーは、気候変動政策に対して非常に後ろ向きな働きかけを行っている。 2029年の自動車生産台数に占めるZEVの比率が最も低いトヨタ(D)や日産(D+)(それぞれ14%、22%)など、EV化で遅れをとる自動車メーカーは、気候変動政策への働きかけもまた非常に否定的である。それに対して、フォルクスワーゲン(C)やテスラ(B)をはじめとするバッテリー式電気自動車(BEV)の生産予測で上位を占める自動車メーカーは、気候変動政策に対して支持的な働きかけを行っており、中でもテスラの前向きな提言は、自動車産業のベストプラクティスとなっている。

野心的な気候変動政策は、陸上輸送の電動化を推進するうえで非常に重要であり、また脱炭素化に不可欠である。 EUのように自動車業界に対して最も野心的な気候変動政策を有する地域は、BEVの生産予測で先行している一方で、日本のように保身的な気候変動政策を有する地域は、国内のBEV生産予測で遅れをとっている。また、水素を燃料とする燃料電池車(FCEV)は、2029年の世界の自動車生産台数の0.1%に過ぎないと予測されており、BEVを促進する気候規制は、この分野の脱炭素化にとって極めて重要である。

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